世の中にいる自分とそっくりな3人の人間と会う方法 | NEW NO-PUBLIC

世の中にいる自分とそっくりな3人の人間と会う方法

 
――世の中には、自分とそっくりな人間が3人いる……。

 誰しもが、一度は耳にした事のある話だ。7人いるなど、人数には違いがあるようだが、日本だけではなく、世界共通の都市伝説的な噂である。そっくりなのは外見だけでなく、性格、趣味、癖など内面的な所までそっくりらしい。

「昨日、○○の駅にいたでしょ? 改札ですれ違った時、声掛けたのに気付かなかったのか、そのまま行っちゃうんだもの」。このような事を一度は友人から言われた事が読者の方々にも経験があるのではないだろうか。

 そこにいた事実はないのに、友人は間違いなく自分だったという。もしかしたら、3人いるといわれる、自分とそっくりな人間がそこにいたのではないだろうか。そんな疑問を抱いてしまう。

 確率的な話でいえば、外見だけそっくりの赤の他人がいる確率は、世界人口60億人の中で考えれば、決して低い事はないだろう。誰しもが、たやすくはないが、ひとりぐらいは探し出せるはずである。

 しかし、外見だけではなく、性格、趣味、癖など内面的な所までそっくりの人間を3人探すというならどうだろうか。可能性は限りなく0に近いはずだ。

 これから紹介するのは、その不可能と思われる出来事を体験した、男性の話である。

 男性は小林克行さん(28歳、仮名)。神奈川在住の公務員。一児の父親でもある。小林さんは語る。

「僕は、子供の頃からUFOだとか、ネッシーだとか、ノストラダムスとか、オカルトめいた事が大好きだったんです。小学生の時に『世の中にそっくりな人間が世の中に3人いる』という話を友達が聞いて、非常に興味を持ちましたね。それから、ずっと子供の時の僕は本当にいると信じて、町に出ては自分と似た背格好の人を探したものでした」

 そんな小林さんにある奇跡のような出来事が起こる。

「2002年6月30日、横浜での事です。この日、横浜の横浜国際総合競技場では、日韓共同のワールドカップ、ブラジル対ドイツの決勝戦があったんです。僕は小中高大と全てサッカー部に所属するほどのサッカー好きで、いつかはワールドカップの決勝をこの目で見ようと思ってました。1994年、1998年のワールドカップもアメリカやフランスへ直接見に行く計画は立ててはいたのですが、毎回計画倒れになっちゃって。そうしたら、なんと地元で開催するというじゃありませんか。必死で、プレミア価格に高騰したチケットを貯金はたいて買いましたよ」

 念願のワールドカップ決勝ののチケットを入手した小林さん。そんな小林さんの脳裏に、あるアイデアが浮かぶ。

「ふと、思い出したんですよね。『世の中には、自分とそっくりな人間が3人いる』という事を。ワールドカップには、世界中からサッカーファンが訪れる。僕と全てがそっくりな人間がいるならば、このワールドカップの決勝は絶対見に来るはずだと。そして、僕は強く念じはじめたのです。世界中にこのテレパシーよ、響き渡れ! みたいな感じで(笑)。『僕は、ワールドカップの決勝が終わったら、競技場内のレストランに行く。僕とそっくりな人間はそこに集まってくれ』と。1ヶ月ぐらいは毎日念じましたかね。我ながら馬鹿みたいな事やってるなと苦笑しましたよ」

 2002年6月30日。ワールドカップの決勝会場となる横浜国際総合競技場に、小林さんは向かった。試合はブラジルがドイツを破り、見事に優勝を飾る。そんな最中、ごった返す人の群れをかき分け、小林さんは東口ゲートにあるレストランへ向かった。

「いるわけがない。いるわけがないんです。自分とそっくりの人間が、レストランに集まっているわけないんです。でも、ひいきのブラジルが優勝して、興奮状態にあったせいもあるのか、僕は少なくとも一人は僕のテレパシーを受けて、レストランにいるはずだ、なんて勝手にと思い込んでました」

 レストランについた小林さんは、店の外までお客でごった返す店内を隈なく見渡してみた。しかし、そこには自分に似た人間などは、ひとりも見当たらなかった。

「まあ、当たり前だよな。いるわけがない。その時はそう思いました。でも、もしかしたら、これからひとりぐらい来るかも知れない、そう思って、行列に並んで、レストランの中で食事する事にしたんです。もう連れとも別行動だったので、ひとりだったのですが、待ち合わせでこれから人が来るという事にして、30分ほど並んだ後、窓際のテーブル席に案内してもらいました。それから10分ほど経ってからでしょうか、信じられない出来事が起きたんです」

 小林さんは当時の状況を興奮気味に喋ってくれた。

「黄色いブラジルのユニフォームを着たひとりの男性が、レストランの入り口からキョロキョロしながら、店の中に入ってきたんです。その男性の顔を見て唖然としてしまいましたよ。なんせ、僕と顔がそっくりなんですから」

 小林さんは、おもわず立ち上がり、その男性の元へと走りよった。小林さんに気付いた男性は、目を丸くして、思わず大きな声で「OH!と叫んだそうだ。

「僕とそっくりの男性はブラジルの日系の方でした。名前はロベルト。最初は日本人かなと思いましたよ。でも、日本語で話しかけたら、英語で答えが帰ってきたんで、日本人じゃないとわかりました。それから僕とロベルトはテーブルについて、お互い信じられないといった表情で、つたない英語と筆談でコミュニケーション取りました。その時は、まるで鏡が目の前にあるかのようでした。ロベルトの方が南の育ちという事もあって、日にやけて僕より皮膚の色は黒かったのですが、まるで双子のようにそっくりでしたから。話を聞くと、ロベルトは日本にワールドカップの応援で訪れると決まったあたりから、ワールドカップ、ブラジルが優勝したスタジアムのレストランで自分とそっくりな人間に会うという夢を繰り返し見たんだそうです。だから、お腹も空いてないのに、レストランを探してきてみたんだと。本当に、夢の通りにいたから、びっくりしたよ。と言ってました」

 ここから、さらに信じられない事が起こる。

「周りから見れば双子にしか見えない、そんな僕等に『Hi』と話しかけてきた人物がいたのです。ロベルトと僕のふたりは、テーブルの横に立ち、にこにこ笑っている彼の顔を見て、思わず息の飲みました。彼の顔はそっくりでした。僕に、そしてロベルトに。彼の名はパク。韓国人の男性でした。僕やロベルトと違って眼鏡をかけていましたが、眉の長さ、太さ、目の大きさ、鼻梁の高さ、唇の厚さ、細部に至るまで、僕等はひとつの胚から培養されたクローン人間の様にそっくりでした。パクもロベルトと同じように、夢でこの出来事を繰り返し見たそうです。3人とも信じられないといった表情でお互いの顔を注視していました。こんな信じられない事が起こるのか、これは絶対に何か神からのメッセージに違いないと、敬虔なクリスチャンであるロベルトが論じている時です。来たんです。最後のひとりが。僕も、もしかしたら、後ひとり来るのではないかと思っていましたが、パクが来てから、10分も経たずに最後のひとりが店の入り口に現れました。僕は一瞬、わからなかったんですよ。でもパクが入り口の方指差して教えてくれて。化粧してたから、わからなったんですね。最後も来るなら男性だと思ってましたし。最後の彼女も店の入り口で僕等3人を見つけて言葉をなくしていました」

 なんと最後のひとりは日本人の女性だった。

 彼女の名前は内藤美紀(当時26歳、仮名)。聞く所によると、美紀さんもここにいる夢を何度も見たらしく、導かれるようにここに来たのだと言う。

「男3人で、『僕等が女性になって化粧したら、こんな顔になるんだ』とか『結構、美人で嬉しいね』なんて、話してました。美紀さんも本当にびっくりした様子で、最初は言葉がでないという感じだったのですが、彼女結構英語が達者で他のふたりに、この信じられない出来事について語っていました。あの時、レストランにいた他の人たちには、僕等はどう映っていたでしょうね、なんせ、国も性別も違う、同じ顔をした4人が固まって、ひとつのテーブルにいるんですからね。それから4人で1時間ほど、雑談したでしょうか。各々の生い立ちについて教えあったんです。また、驚かされたのは、年齢で僕と酒井さんは当時26歳、なんと誕生日が一緒でした。いまさらこの偶然に驚く事もないんですが、聴いた瞬間にゾゾッて背中に戦慄が走りましたね。ロベルトとパクは僕等の2歳下の当時24歳で、なんとこの2人も僕と美紀さんとは誕生日が違いましたが、同じ誕生日でした。つまり、美紀さんと僕。ロベルトとパクがペアで誕生日が一致していたのです。それ以外には、血液型はA型で4人一緒。もちろんサッカーは大好き。性格は全員明るくて温厚。そして何より顔が一緒。こんな共通点がありすぎる4人がひとつの場所に集まるなんて、奇跡以外の何ものでもありませんでしたよ。宴もたけなわで、まだまだ話ていたかったのですが、ロベルトが飛行機の時間が迫っているとの事で、最後に全員でメールアドレスを交換しあい、僕のデジカメで記念写真を取ってお別れしました。あんな事は人生において、もう二度とないでしょうね」

 こんな事が2002年の日本において、本当に起きたというのだ。にわかには信じられない事ではある。最後に小林さんに他のそっくりさんとは、まだ連絡取っているのか聞いてみた。

「今年の夏ごろまでは、お互い連絡取り合っていたのですけどね。美紀さん以外はそれほど英語が得意ではなかったせいか、自然と連絡が途絶えがちになっていってしまいまして、最近は連絡は取っていないですね。ロベルトやパクとはメールのやりとりもほとんどなくなりましたし。美紀さんはメールアドレスが変わったのか、メール送っても戻ってきちゃいますし。でも、またいつか4人で会いたいとは思ってます」

 デジカメの写真データを見せて欲しいと小林さんに頼んだのだが、印刷をする前にデータが壊れてしまったとの事だった。本人はその事に対して、大変残念がっていた。

 この小林さんの話の真偽を確認する術はないが、また4人で集まる事があるのならば、その際は是非同席したいものである。

 来年2006年、ドイツで開かれるワールドカップ、小林さんは今の所予定があけば、観にいくそうだ。ワールドカップやオリンピック以外に、世界中から人が集まるイベントはそうそうない。

 自分のそっくりさんに会いたいと思った貴方。是非試されてみてはいかがだろうか。